ADHDの私、片付けたいのに「何から手をつければいい?」で止まる話


「あー、片付けろって言われた……(´・ω・`) 」

部屋を見渡してみる。

確かに、きったねぇ。

これはさすがに片付けなければ。
よし、頑張るぞ!

……と、思ったところまではよかった。

「…………で、何からやればいいんだ?」

服、本、コスメ、書類、よく分からない小物たち。

物が多すぎて、どこから手をつければいいのか全く分からない。

とりあえず、手前にあるものからどかしてみる。

「あ、これ懐かしい〜!!」

しばらく眺める。

ついでに、その周辺から昔使っていたものが出てくる。

「あー、これも懐かしい!」

……数時間経過。

「げ、全然進んでない……」

まずい。

今度こそ本気を出すk――

○イン♪

「あ、スマホ鳴った。なんだろう」

スマホを見る。

……さらに数時間経過。

部屋は、ほぼ何も変わっていない。

なんでやねん!!!!!

こんなことを、私は何度も繰り返しています(笑)

別に「散らかった部屋が好き!」というわけじゃなくってよ?

むしろ、きれいな部屋には憧れる。

ホテルみたいな部屋、いいよねぇ。

物が少なくて、机の上には必要なものだけで・・・

そんな部屋で優雅に紅茶でも飲みたい。

しかし現実は。きっっったねぇ汚部屋の主である。

「片付けたい。でも、何から片付ければいいのか分からない」

私はADHDなのですが、改めて自分の片付け風景を振り返ってみると、ADHDでみられる特徴と重なる部分をいくつも発見!

ちょっと難しい話になりますが、米国国立精神衛生研究所(NIMH)が示すADHDの不注意症状にも、「作業を整理することが難しい」「持続的な注意を必要とする作業が難しい」「関係のない考えや刺激に気を取られやすい」「日常的な用事を忘れる」といった特徴が挙げられています。

もちろん、ADHDだから全員が片付けられないわけではありません。

逆に、片付けが苦手だからADHDというわけでもありません。

あくまで「私の場合、なぜ片付けで詰まりやすいんだろう?」という視点で、自分の行動をちょっと分析してみます。

今回は文献入れてみたから読み応えあるかも・・・?

理由① とにかく注意がそれる

まず、最大の敵。

目に入ったものに、すぐ注意を持っていかれる。

私は片付けを始めると、

「この服をクローゼットに戻そう」

と思って服を持つ。

↓

クローゼットを開ける。

↓

昔買った服を見つける。

↓

「あ、これ久しぶりに見た!」

↓

試着する。

……みたいなことが普通に起きます。

最初にやろうとしていたことは、どこへ行ったのでしょうか。

NIMHでも、ADHDの不注意の特徴として「関係のない考えや刺激によって注意がそれやすいこと」が挙げられています。成人ADHDを対象とした研究でも、持続的に注意を保つ課題などで対照群との差が報告されています。

私の場合、これが物の多い部屋になるとなかなか大変でして・・・

目の前に、

服。

本。

コスメ。

アクセサリー。

書類。

昔買った何か(笑)

……と、注意を引くものが大量にある。

つまり私にとって散らかった部屋は、

「こっち見て!!!」と話しかけてくるものが大量に置いてある空間

みたいなものなのかもしれません。

「床にある服を片付ける」という目的で始めたはずなのに、気がつけば昔のアルバムを眺めている。

片付けが進まないわけです。



理由② 「片付ける」って、実は判断することが多すぎる

そしてもう一つ。

私は、

「部屋を片付ける」

という一つの作業をしているつもりでした。

でも、よく考えてみると違う。

物を一つ手に取るたびに、

「これはいる?」

「いらない?」

「捨てる?」

「まだ使う?」

「売れるかな?」

「売るならどこに置く?」

「これはどこに収納する?」

「収納場所がいっぱいなんだけど、どうする?」

……と判断しなければなりません。

片付け、選択肢多すぎない?

ここで関係してくるのが「実行機能」です。

実行機能は一つの能力ではなく、目的に向かって行動するための計画、判断、抑制、ワーキングメモリなどを含む複数の認知機能をまとめた考え方です。

ADHDでは、この実行機能について多くの研究が行われています。

83研究、ADHD群3,734人と対照群2,969人をまとめたメタ解析では、ADHD群で反応抑制、注意の維持、ワーキングメモリ、計画などの実行機能課題に平均的な弱さが認められました。

ただし重要なのは、ADHDの人全員に実行機能の弱さがあるわけではないということ。

研究者も、実行機能の弱さだけですべてのADHDを説明できるわけではないとしています。

とはいえ私の場合、

「部屋を片付ける」

という漠然とした指示を出されると、

「いや、そのために私はまず何をすれば?」

となりやすい。

「机の上のゴミだけ捨てる」

なら分かる。

でも、

「部屋をきれいにする」

になると急に難易度が上がります(´・ω・`)

片付ける範囲を決めて、順番を決めて、物を分類して、必要か不要か判断して、収納場所を決めて……。

こうして書き出してみると、

私が思っていたより、片付けって頭を使う作業なのでは?

という気がしてきます。

理由③ 判断しているうちに「あれ、何してたんだっけ?」

さらに、片付けでは大量の情報を一時的に覚えておく必要があります。

たとえば、

「これは売る」

と決める。

次のものを手に取る。

「これは残す」

さらに次。

「これは別の部屋に持っていく」

……とやっているうちに、

「あれ? 売るものってどこに置いてたっけ?」

となる。

そして数分後。

「この袋、何を入れるために置いたんだっけ?」

さらにその後。

「…………私、今何してた?」

となる。

ここで関係する可能性があるのが、ワーキングメモリです。

ワーキングメモリは、情報を短時間保持しながら、それを使って作業を進めるための認知機能です。

成人ADHDのワーキングメモリ研究をまとめたメタ解析では、ADHD群では対照群と比較して、言語性・視空間性の両方のワーキングメモリ課題で平均的に成績が低い傾向が示されています。

もちろん、これも全員に当てはまるわけではありません。

ただ、私自身の片付けを考えると、

「これは売る」

「これは捨てる」

「これはあとで別の部屋へ」

「その前にこっちを片付ける」

と頭の中に情報を置き続けているうちに、

最初の情報から順番に消えていく感覚

があります。

片付けながら考えることが増えれば増えるほど、頭の中がごちゃごちゃしてくる。

最終的には、

「もう全部後で考えよう」

となり、とりあえず適当な場所へ置く。

そして数日後。

その「とりあえず置いたもの」が、新たな散らかりを生み出します。

永久機関かな?www

理由④ 数時間後の「きれいな部屋」より、今すぐ楽しいスマホが強い

そんなこんなで片付けていると、

スマホが鳴ります。

○イン♪

これが強い。

めちゃくちゃ強い。

片付けを続ければ、数時間後には部屋がきれいになるかもしれません。

一方スマホは、

開けば今すぐLINEが読める。

SNSを開けば今すぐ新しい投稿が見られる。

動画を開けば今すぐ面白いものが出てくる。

片付けのご褒美は遠い。

スマホのご褒美は近い。

「遅延割引(delay discounting)」という考え方があります。

これは、報酬を受け取れるまでの時間が長くなるほど、その報酬の主観的な価値が下がっていく現象のこと。

ADHDと遅延報酬については複数の研究があり、ADHD群では対照群よりも、「あとでもらえる大きな報酬」より「今すぐもらえる小さな報酬」を選ぶ傾向が平均的に強いことが報告されています。効果の大きさは研究や課題によって異なり、これもADHDの人すべてに当てはまるものではありません。

これを知ったとき、

「なるほどなぁ……」

と思いました。

もちろん、

「ADHDだからスマホを見たら止まらない」

と単純に説明できるわけではありません。

スマホの使い方には習慣や環境など、いろいろな要因が関係します。

でも少なくとも私の場合、

「あと2時間頑張れば部屋がきれいになります!」

と、

「スマホを開けば今すぐ楽しいです!」

を並べられると、

後者があまりにも強い。

……そして気づけば数時間。

片付けは止まっています。

「片付けられない」は、一つの問題じゃなかった

こうして自分の片付けを振り返ってみると、

私は単純に、

「片付けが苦手」

なのだと思っていました。

でも、もう少し細かく見てみると、

  • 途中で注意がそれる
  • 何から始めるか、どう分類するかを考える必要がある
  • 判断した内容を覚えながら作業を続ける
  • 目の前にもっと魅力的なものが現れると、そちらへ行ってしまう

という、いくつもの要素が重なっていました。

これを全部まとめて、

「片付けなさい!」

と言われても、

私の頭の中では、

「いや、まずどこから!?」

となっていたわけです。

そう考えると、少なくとも私の場合は、

「部屋を片付ける」

ではなく、

「机の上にあるゴミを捨てる」

「床にある服だけ集める」

「今日はこの引き出し一段だけ」

くらいまで小さくした方が、動き始めやすい気がします。

実際、NIMHでもADHDへの認知行動療法やセルフマネジメントの例として、大きな課題をより小さく扱いやすいステップに分ける方法が紹介されています。

……というわけで。

ここまでちまちま分析してきましたが、

現在の私の部屋はどうなのか。

普通に散らかっています。絶対他人には見せたくないレベルで。

理屈が分かったからといって、突然片付け上手になるわけではないらしい。

まことに残念ですね。

でも、

「なんで私はこんなこともできないんだ」

と思うより、

「なるほど、私はここで詰まってるのか」

と分解してみると、少し対策は考えやすくなります。

次に片付けるときは、

「部屋を片付ける!」

なんて壮大な目標は立てません。

まずは、

目の前にあるゴミを3つ捨てる。

そのくらいから始められたらいいなと思います。

・・・もちろん、スマホは金庫に入れて。

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参考文献・情報源

  1. National Institute of Mental Health(NIMH). Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: What You Need to Know. Revised 2024.
  2. Tucha L, et al. Sustained attention in adult ADHD: time-on-task effects of various measures of attention. 2017. PMID: 26206605.
  3. Marchetta NDJ, et al. Sustained and focused attention deficits in adult ADHD. 2008. PMID: 17712171.
  4. Willcutt EG, Doyle AE, Nigg JT, Faraone SV, Pennington BF. Validity of the executive function theory of attention-deficit/hyperactivity disorder: a meta-analytic review. Biological Psychiatry. 2005;57(11):1336-1346. PMID: 15950006.
  5. Alderson RM, et al. Attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) and working memory in adults: a meta-analytic review. 2013. PMID: 23688211.
  6. Marx I, et al. ADHD and the Choice of Small Immediate Over Larger Delayed Rewards: A Comparative Meta-Analysis of Performance on Simple Choice-Delay and Temporal Discounting Paradigms. 2021. PMID: 29806533.

※この記事は、ADHDに関する研究報告と筆者自身の体験をもとにしたものです。研究で示される特徴は集団としての傾向であり、すべてのADHD当事者に同じ特徴がみられるわけではありません。また、片付けの苦手さだけでADHDかどうかを判断することはできません。

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