「起きる」と「動き出す」は別の作業だった。ADHDの私、ギリギリ通院の朝を分析してみた

ADHD

私は病院やまつ毛パーマの予定にほぼ間に合わない

なんとも情けない話だが、事実である。予約先には大変申し訳ない。いや、ぎりぎり間に合うことも多いので少し盛ってはいるが、おおむねこの通りだ。

例えば、オフの日の11時に病院に行かなければならないとしよう。前日に乗る電車の時間を調べ、そこから起床時間を考える。私の場合は最低20分あれば家を出発できるが、余裕をもって電車の1時間前にはアラームをセットしておく。

10:20の電車に乗りたいため、その日も9:20にはアラームをセット、二度寝対策のため9:30にも設定しておいた。準備万端、明日は休日だから、2時まで夜更かししてしまったが7時間以上は眠れるため問題ないはずだ。

さて、結果はどうなったか。皆さんの予想通り、私は理想を裏切られ、電車までダッシュを決めるはめになったのである。

私は当日どんな行動をとり、このような結果に陥ったのか。実際の行動を思い出しながら整理してみよう。

9:20起床するも2度寝
9:30ゴロゴロしながらスマホをいじり始める
10:00ベッドからでる
10:05洗顔、着替え 、メイク
10:07朝食
10:14家を出発
10:20なんとか電車に乗る

・・・なんでやねん。こうもうまくいかないのはなぜなのか。

時間を食っているのは誰なのか

ベッドを出たのが10:00→家を出たのは10:14=約14分。

もちろん記録はざっくりなので秒単位の正確な測定ではないが、最低ラインの20分を6分も下回っているのに、準備自体は間に合っている。

私は「朝の準備に時間がかかる人」だと思い込んでいたが、どうもそうではないのかもしれない。というか、準備自体は早いほうとすら感じる。

では、時間はどこでなくなったのか。何に時間がかかったのか、見てみよう。答えはかなり分かりやすい。

9:20には目覚めているのに、ベッドから出たのは10:00。どう考えてもここで時間が食われている。

そもそもの前提条件はどうか

私は前日に9:20 起床(予備で9:30)、と予定していた。

だが実際には、

目が覚める
↓
二度寝する
↓
スマホを見る
↓
ベッドから出る

このような工程であり、二度寝とスマホ、という予定外のイベントが発生している。なぜ予定外だとわかるのか。それは、前日の時点では「起床」=「行動を始める」として考えていたからである。

休日は二度寝、そして起床前にだらだらとスマホをいじる癖があるため、病院という予定があっても前提条件として「二度寝」と「スマホ」は組み込んでおくべきだったのだ。こうなると、前日の予定はなかなか雑なことに気が付く。

では、仕事の日はどうなのか

今度は遅刻しなかった仕事の日についてみてみよう。

7:20 目が覚める
7:30 ベッドから出る
7:35 洗顔・着替え
7:45 朝食
8:00 メイク
8:10 歯磨き・猫の毛をコロコロ
8:17 出発
8:27 電車

ベッドから出て出発までに47分かかっている。ぎりぎりの日は14分だったため、3倍以上の時間を準備に費やしている。それでも、仕事の日は普通に間に合っている。そのため、「準備に時間がかかる=遅れる」でもないらしい。

では、何が違ったのか

ここまでを見てみると、どうやら単純に、

「準備に時間がかかったから遅れる」

という話ではなさそうだ。

むしろ病院の日は、ベッドから出てから14分で家を出ている。対して仕事の日は47分もかかっている。それでも仕事の日は普通に間に合っている。

となると、見るべきなのは「準備に何分かかったか」だけではない。

まず気になるのが、

準備を始めるまでの時間

である。

病院の日は9:20に一度目を覚ましているにもかかわらず、ベッドから出たのは10:00。つまり約40分もの間、私は「起きているけど行動を開始していない」状態だった。

仕事の日は7:20に目を覚まし、7:30にはベッドから出ている。その差は10分。

病院の日との差はかなり大きい。

こうして見ると私は、

「起きるのが遅い」のではなく、「目が覚めてから行動を始めるまでが遅い」

のではないか。

……似ているようで、全然違う。

私は今まで、

「朝弱いんだよな~」

くらいにしか考えていなかった。

しかし、

「目を覚ます」

と、

「布団から出て、次の行動を始める」は別の作業だったらしい。

また一つ、雑にまとめていたことが発覚した。

ADHDと時間管理には関係があるのか

ここまでくると、

「これもADHDと何か関係があるのでは?」

と気になってくる。

米国国立精神衛生研究所(NIMH)が紹介している成人ADHDの日常生活上の困難には、時間管理や計画、整理の難しさ、日常的な用事を覚えておくことの難しさなどが挙げられている。

【出典】
National Institute of Mental Health(NIMH), ADHD in Adults: 4 Things to Know

なるほど。

確かに私も、

「10:20の電車に乗る」

という最終目標は分かっている。

でも、

「じゃあ何時にベッドから出る?」

「何時までに朝食を終える?」

「メイクにはどのくらい時間を残しておく?」

となると、途端に予定が雑になる。

今回は、

9:20 起床
10:10 出発

という、かなり大ざっぱな予定だった。

その間の50分は、“なんかいい感じに準備する時間”である。

そりゃ予定も狂うわ。

とはいえ、

「ADHDだから時間管理ができない!」

と全部まとめるのも違う。

ADHDの人全員が遅刻するわけではないし、遅刻する人が全員ADHDなわけでもない。

あくまで私の場合、ADHDでみられる特徴と、自分の行動に重なるところがあるかもしれない、くらいで考えておこう。

「タイムブラインドネス」だけで説明できるのか

ADHDと時間について調べていると、

「タイムブラインドネス」

という言葉をよく見かける。

ざっくり言えば、時間の経過を把握したり、どのくらい時間がかかるか見積もったりすることの難しさを表す言葉として使われているようだ。

最初は、「これや!!!!」と思った。

休日の朝、「まだ時間あるし」と思ってスマホを見ていたら40分経っている。どう考えても怪しい。

しかし調べてみると、成人ADHDと時間知覚については、違いを示している研究もあれば、はっきりした差が出ていない研究もあるようだ。成人を対象にした研究自体も、まだそこまで多いわけではない。

【出典】
Time Perception in Adult ADHD: Findings from a Decade — A Review

また、ADHDと時間知覚について複数の研究をまとめたメタ解析では、ADHD群と対照群の間に平均的な差が報告されている。ただし、子どもから成人までを含んだ研究であり、

「ADHD成人は必ず時間感覚がおかしい」

と単純に言えるものではない。

【出典】
Time-Perception Deficits in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis

ということで、

「私はタイムブラインドネスだから遅れるんです!」で終わらせるのはやめておく。

それより、

実際に私の朝では何が起きていたのか

を見た方が、対策は考えやすそうだ。

「ベッドから出る」だけでも、意外と脳は忙しい

改めて病院の日を見てみる。

9:20に目を覚ます。

しかし、

「もうちょっと寝よう」

となる。

9:30。

今度はスマホを触る。

そして10:00までベッドから出ない。

ここで必要だったことを考えてみる。

まず、二度寝をやめる。次に、スマホを見るのをやめる。そして、ベッドから出て、洗顔や着替えへ行動を切り替える。

文章にすると簡単だが、これらにはいくつかの認知機能が関わっている可能性がある。

例えば、今していることを止めるための抑制。今やっている行動から別の行動へ移るための切り替え。「10:10には出なければならない。そのためには何時に動き始める必要があるか」を考えるための計画や時間管理。

朝の支度全体で考えれば、「次は歯磨き、そのあと水筒」など、情報を一時的に覚えながら行動するワーキングメモリや、「出る前に薬を飲もう」のように未来にやることを覚えておく展望記憶も関わってくる。

成人ADHDでは、ワーキングメモリや抑制などの実行機能について、対照群との平均的な差を報告した研究がある。ただし、「私はスマホをやめられなかった=抑制機能に問題がある」と判断できるわけではない。

あくまで、「この行動をするためには、こういう処理も必要なんだな」と考える材料である。

私は今まで、「布団から出ればいいだけじゃん」と思っていた。

……が。

その“出ればいいだけ”ができたらそもそも困らないのである。

もう一つ気になったのが「余白」

ここまで考えて、もう一つ違いに気が付いた。

病院の日。予定では10:10出発、実際は10:14出発。

4分遅れている。

仕事の日。予定では8:15出発、実際は8:17出発。

こちらも、2分遅れている。

そう、間に合った日も予定通りには出発できていない。仕事の日だって、別に予定を完璧に守れているわけではないのだ。

それでも電車には間に合っている。

つまり、「予定通り1分もズレずに行動できたから成功した」わけではないらしい。

多少予定がズレても、それを吸収できるだけの余白があった。

一方、病院の日は、

9:20に起きれば大丈夫。

10:10に出れば大丈夫。

という予定を立てていたものの、

その間に二度寝やスマホが入ることを考えていなかった。

しかも、

「9:20に起きる」

としか決めておらず、

「何時にベッドから出るか」

は決めていない。

つまり、

予定自体が私の実際の行動に合っていなかった可能性がある。

毎回、

「明日こそ予定通りに動くぞ!」

と自分を予定に合わせようとしていた。

でも逆に、

自分が多少ズレることを前提に予定を作った方がいいのでは?

そんな気もしてきた。

「私は遅刻する人」でまとめると、何も分からない

今回、自分の行動を振り返るまでは、

「休日は時間管理が下手なんだよね~、朝も弱いし」

くらいに思っていた。

でも細かく見てみると、病院の日に大きく時間を使っていたのは、朝の準備そのものではなく、目が覚めてからベッドを出るまで。

さらに、

「起床」と「行動開始」を一つにまとめていたこと。

休日なのに二度寝とスマホを予定に組み込んでいなかったこと。

予定から数分ズレることを吸収する余白が少なかったこと。

など、いくつかの要素が見えてきた。

もちろん、たった2日の記録なので、

「これが私がギリギリになる原因です!」

と決めつけることはできない。

でも少なくとも、

「ADHDだから時間管理が苦手」の一言で終わらせるよりは、かなり対策を考えやすくなった。

そしてこれは、

「遅刻」以外でも同じなのかもしれない。

片付けられない。

お風呂に入れない。

勉強を始められない。

LINEを返せない。

「できない」という結果だけを見ると、

自分は何でもできない人のように見えてくる。

でも、

どこまではできていて、どこから止まるのか。

できた日は何が違ったのか。

まで見てみると、

案外、

「全部が苦手」

ではないのかもしれない。

さて、ここまで読んでくださってありがとうございました。

ワーキングメモリ・展望記憶・抑制・切り替えといった認知機能の視点から自分の朝を分析した具体的な手順と、実際に使用した分析表、そこから私が考えた対策については、noteの方にまとめています。

「時間あったはずなのに、なぜか今日もギリギリだった」という方は、自分の朝と比べながら読んでもらえるとうれしいです。

「起きる」と「動き出す」は全く違う。ADHDの私が「消えた40分」を分析してみた|みなも@ADHDの脳みそ

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